オーディオの世界では「Fidelity(忠実度)」という言葉がしばしば使われますが、単語そのものの意味は「原物そっくり,真に迫っていること,迫真性」ということだそうです。
あまり知られていないことかもしれませんが、録音の世界には
「Audio fidelity(音響的忠実度)」と「Score fidelity(音楽的忠実度)」
という二つの考え方があります。
Audio fidelity(音響的忠実度)は現場(原音)と同じ音を再現するという考え方、Score fidelity(音楽的忠実度)は楽譜に書かれた作家の意図に忠実にという考え方で、Londn Deccaなどはこちらの考え方を採用しています。
弊社の考え方はScore fidelity寄りのAudio fidelityだと思います。
「音楽を伝える」ということを起点に考えるとAudio fidelityという考え方には少し無理があるように思えます。
それは、現場(原音)の再現には再生装置や再生環境が大きく依存してくるため、幅広く音楽を届けるためには少し無理のある考え方ではないか?と思っています。
高級なオーディオで聴く音とラジカセで聴く音にはやはり大きな差があって、そこで同じ音場を再現するのは難しいように思えます。
Score fidelityでは、どんな再生装置でも音楽家が意図したバランスや音色、ニュアンスをできる限り伝えようという感が方で、そのためにAudio fidelityが目指す「ホールの特等席で聞いているような音」というニュアンスは求めないことが多いですし、僕自身あまり考えたことがありません。(そもそもホールの特等席も人によって違いますし・・・)
しかしながら、Score fidelityという考え方を採用した場合でも現場で奏でられたサウンドには音楽に必要な様々なニュアンスが込められているために、それを余すところなく収録する必要も生まれるため、「Score fidelity寄りのAudio fidelity」になってしまいます。
録音に対する考え方やアプローチも人それぞれなので、どれが正解ということではありませんが、
制作に携わるスタッフとして、このあたりの事を理解し、自分の考えを明確にしておく事はミュージシャンとの円滑なコミュニケーションのために非常に大切なのではないかと考えます。
ハイレゾというメディアでfidelityが向上した今、そのあたりの事について一度考え直すのも良いかな?
と思い書いてみました。
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