新しいスピーカーを導入する事にした。
僕がこの仕事を始めてから長い間、NHKの中にある506というスタジオのスピーカーが大好きだった。
僕の耳はそのスピーカーに育てて貰った様な物だ。
そのスピーカーを制作、設置されたのがREY AUDIOの木下正三さんだった。
就職したての3月、無謀にも3週間の休暇を取ってロンドンに研修旅行に行った事がある。
その行きの飛行機の中、隣の席に座って入らしたのが木下さんだった。
ロンドンまでの道すがら、業界1年生の僕に優しく、熱く、音について、音楽について語ってくださった事を思い出す。
それ以来、数年に一度しかお会いする事もなくなってしまっていたが、今日、久し振りに電話をした。
あいにく木下さんは体調を崩されていてお会い出来るのは来月の半ば以降になってしまうけど、木下さんの声を聞くだけで何故か怖い先生の前にいる小学生の様に縮上がってしまう。
それは、木下さんの音、音楽に対する厳しさにまだまだ自分が追いついていない事への畏怖の様な物なのかも知れない。
木下さんの作られるスピーカーは音から音楽を、真実を紡ぎ出す。
その厳しさに絶えられる音を僕達は録らなくてはならないといつも思っていた。
独立して4年目にやっと木下モニターに手が届くところまでやってきた。
そういえば、昨日一緒に買い出しに行ったミュージシャンから素敵な写真をもらったので載せておきます。