CD制作マニュアル(クラシック編2011Ver.)

何年か前に書き換えた原稿を仕上げてみた。
CDを初めて制作される方には参考にしていただけると思う。
弊社の音楽制作の基本的なスタンスもご理解いただけると思う。
ご質問等はinfo@vvd.sakura.ne.jpまで。

お仕事のご依頼もお待ちしています!

CD制作マニュアル(クラシック編)

Ver. 0607 VIVID productions Co.,Ltd

経験豊富なスタッフと
CDは演奏家のポートレートであり、名刺です。
せっかく時間とお金をかけたとしても、中身が貧相な物が出来上がってはそれを使って人に自己紹介する気にもなれません。
VIVID productionsは自社レーベルでの豊富なCD制作の経験と、NHKのクラシック番組の録音で磨かれた技術、数々の雑誌で優秀ディスク、優秀録音に輝いた実績を元に、ハード、ソフトの両面からお客様のCD制作をサポートいたします。

はじめに
CDの制作は大変な仕事です。
録音という非日常的な場所での演奏を強いられ、収録後の編集の段階では自分の演奏と真正面から向き合わなければなりません。そうした一連の作業の中で演奏家にとって最も大切な事は“常に平静な状態で音楽を楽しめる“状態に自分自身をコントロールする事です。
CDを購入する人は演奏者のあら探しをするために購入する訳ではありません。
間違いのない、正確な演奏を求めているわけでもありません。
演奏家の持つ“音楽”を聞くためにCDを購入します。

“CDは、演奏家の音楽をリスナーの皆さんに届けるための媒体”
これがVIVID productionsのCDに対する位置づけです。

だとすれば、一連の作業の中で演奏者としてどんなときにも音楽を楽しめる精神状態を作って頂いて、それをCDというパッケージに封じ込めることが最も重要な作業となります。
このマニュアルは、あらかじめお読みいただくことによって作業全体の流れを把握して頂き、初めての体験でも戸惑い無く音楽に集中して頂くために制作しました。

皆様の音楽制作に少しでもお役に立てれば幸いです。

お打合せ
お客様が制作されたいCDのイメージを元に、録音場所、録音方式、録音のスケジュール、ジャケットのデザイン、制作日程などについて打合せをします。

ホールの選定と下見
演奏される楽器、音楽に応じて適した響きがあります。特にクラシック音楽の場合、楽器の音そのものと同様に、録音する場所の響きも演奏、サウンド、録音の全てに大きな影響を及ぼします。
従ってホールの選定は注意深く行うべきです。
ホールの響き、設置してあるピアノ、アクセス、料金、空き日程などを調べてホールを選定します。
ホールを予約する前には実際にホールに楽器を持参して演奏される事をお勧めします。実際の響きを確認する事は勿論、録音当日不要な緊張やとまどいをなくすためにも楽器を持参しての下見は大切です。
また、レコーディングは長時間にわたる集中を要求されます。
演奏する時間にはしっかり演奏して、休憩するときはしっかりとリラックスできることがとても大切です。
そういう意味ではお客様がリラックスできる環境、美味しい食事、お茶がとれる場所がホールの周辺にあるか?
などをチェックすることも大切です。

ホールの予約
条件的に満足のいくホールが決まったら予約をします。
録音の初日は機材のセッティング、音の調整などで3~4時間が必要となります
録音にかかる日数は、最低でも2日、理想的には3日見ておいた方が良いでしょう。特に初めてCD制作をされる方には余裕を持って3日ホールを押さえる事をお勧めします。
録音は春か秋に行うのが理想です。
夏と冬は楽器にとってもあまり良い季節とは言えませんし、空調の使用が前提になるため、空調ノイズなどの問題がつきまとい、録音に良い結果をもたらしません。
予約に際しては、ホールごとに細かい決まりがありますので漏れの無い様に注意しましょう。

ホール打合せと技術下見
ホールと録音当日の使用について具体的な打合せを行います。
使用時間、ピアノや楽屋の使用、その他付帯設備の使用について打合せをして頂きます。借り主は基本的にお客様ご自身となりますので、打合せにはご出席をお願いします。
このとき、技術スタッフも同行して録音機材の設置場所や搬入経路の確認、電源の使用、などについてホールと打ち合わせを行います。

ピアノ技術者(調律師)の予約
ピアノを使用する場合、ホールの予約と同時にピアノ技術者を予約される事をお勧めします。
ピアノ技術者はご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、音楽作り、音作りにおいて録音技師以上に重要なパートです。
録音に慣れたピアノ技術者であれば
演奏家が弾きやすいこと、演奏家がイメージした音色が再現できること、マイクとスピーカーを通して聞いた音が演奏家のイメージどおりになっていること。以上の3つのバランスを取ることが出来ます。
録音に慣れていないピアノ技術者は、ホールの中での音色が良ければそれで仕事を終えてしまいます。
しかし、録音においてはスピーカーから再生される音が全てです。ここに最終のターゲットをおけるピアノ技術者の力があってこそ、演奏家から自由な音楽を引き出し、より魅力的な音楽と音色を記録することが可能になります。

ホールによっては指定の業者さんがある場合がありますのでご注意下さい。

ディレクターの確保
本番の録音で演奏だけに集中して頂くために、ディレクターを立てる事をお勧めします。
ディレクター不在の場合、ご自分の演奏をご自分で聴いてOK,NGの判断を下さなければなりません。ご自分の演奏を理解されている方に演奏をチェックしていただくことによって、無駄なプレイバック(録音した物を再生してチェックする事)や精神的な負担を減らす事が出来、より音楽に集中する事が可能になります。(弊社からの派遣も可能です)

スタッフによるリハーサルの下見
レコーディングに向けてのリハーサルが固まってきた頃、スタッフがリハーサルにお邪魔します。
エンジニアが生の音を聞く事によって録音の方法やイメージを固めるためと、実際に顔を合わせ、会話をする事によって人間関係を円滑にし録音の現場には少しでも“気心が知れたスタッフ“として参加するためです。
これによって録音現場での緊張を呼び起こす要素を少しでも軽減させるのも狙いの一つです。
録音当日までに何度か食事などご一緒しながら、お互いの音楽に対する理解を深める作業を行う場合も少なくありません。

その他打ち合わせ
録音の進め方、どのような感じの音に仕上げたいか?
など、弊社事務所のスタジオで、実際に音を確認しながら打ち合わせします。

録音当日
準備
技術チーム、調律はホール会館と同時に準備を開始します。
用意する機材の内容にもよりますが、最低2時間が機材セッティングの時間のために必要になります。
調律の仕上がり具合などにもよりますが、準備の間練習をしていただくことは問題ありません。但し、機材が行き交いますので楽器の扱いにはご注意下さい。

テスト録音
準備が終わっても直ぐに本番の録音に入れる訳ではありません。
録音しようとしている音が、意図した音になっているかどうかをチェックする必要があります。
マイクを通して聞く音は必ずしも生で聞く音と同じではありません。その“差”を修正するための作業が必要です。
演奏を録音する、再生して聞いて議論する、機材のセッティングを修正する・・・この繰り返しを何度か行います。
全員がOKと思える音になったところでいよいよ本番の録音となります。
録音内容にもよりますが、この作業には1~2時間かかります。
ですから、1日目の録音開始時間は12時から3時の間となる事が多い様です。

本番録音
リラックスして本番に臨みましょう!!
録音には気分の落ち着く物などを持ってこられる事をお勧めします。
編集を前提とした録音の場合でも、通しで演奏するテイクを確保する事が必要です。
部分ばかりで進行してしまうと全体の仕上がりが見えないままに録音を終えてしまう事になり、たとえ間違いのない演奏が出来上がったとしても、平坦で面白みのない音楽になってしまう場合がほとんどです。
ですから、VIVID productionsでは、レコーディングが決まったら“とにかく、みっちり練習してきてください。”とお客様にお願いします。
これはお客様の技量云々の問題ではなく、録音という非日常的な場に身を置かれた場合でも、しっかりとご自分の音楽を再現していただくためのお願いです。
個人差はありますが、なるべく少ない回数、集中して演奏に臨む方が良い結果を得られる事が多い様です。
たっぷりと休憩を取りながら演奏を心から楽しめるように心がけましょう。

撤収
撤収には1時間から1時間半を必要とします。
ホールの退出時間からその時間を引いた時間には録音を終了して下さい。

編集
録音終了後、全ての演奏を収録したCD-Rをお渡しします。これをお持ち帰り頂いて、演奏、録音のチェックと後日の編集箇所の指定に使用して頂きます。
CDの演奏の冒頭にはテイクナンバーと呼ばれるコールが入っています。
編集に使用する譜面上に、編集箇所とテイクナンバーを書き込んで頂く事によって編集箇所を指定して頂きます。
その指示に従って編集を進めていきますが、必ずしもご指定の場所で編集が出来ない場合もあります。その場合、音楽的にダメージのない範囲で伝習箇所を前後させる事があります。
編集が終わった素材は立ち会いの元でご確認頂くか、CDを郵送してチェックして頂きます。
立会編集は別途スタジオ使用料が必要です。

マスタリング
編集の終わった各曲を指定の順番に並べ、曲ごとの音量、音質、曲同士の間の時間を調整します。曲間の時間、音量差などは曲ごとのイメージを大きく左右します。
並べた物を通して聞く、修正を加える、また通して聞くと言う作業の繰り返しです。忍耐力を必要としますが、頑張りましょう。
CDに書き込まれる曲名、CDのタイトルやCD番号などの情報もこの作業で原盤に記録します。
マスタリングも編集同様CDのやりとりで行う事が可能です。
立会の場合、別途スタジオ使用料が必要です。
マスタリングで使用するMerging Technologies Pyramixの画面

ジャケットデザイン
ジャケットのデザインは音同様とても大切です。
いくら記録された音が立派でも、ジャケットのデザインがみすぼらしいとお客様はCDについて安っぽいイメージを抱いてしまって終わりです。
VIVID productonsでは、演奏家の皆様にジャケットにはお金と時間をかけてくださいとお願いしています。
音楽のイメージに沿ったジャケット、音楽のイメージを補うようなジャケットを作ることによって、音楽そのものがいっそう輝きを増して聞こえるようになります。
弊社で専属のデザイナー、カメラマンをご紹介できます。

ジャケットデザインをご自分で行われる場合、弊社からテンプレートのデータをお渡ししますので、それを使用して作業を行ってください。制作する物はジャケット、盤面、帯、バックインレイの4点です。

また、実際の印刷される物は、コンピューター上で見ている物、またはコンピューターからプリントアウトされた物と色合いが異なってしまいます。
これはコンピューターと印刷の色の出し方の違いに起因する物です。
厳密に色を再現されたい方には色校正をお勧めしますが、別途時間と費用がかかります。盤面についても同様です。

JASRACについて
著作権の申請、使用の許諾が必要な楽曲が含まれている場合にはJASRACへの申請をお願いします。
使用の許諾につきましては、弊社で代行する事も可能です。
JASRACに著作権の管理を申請したり、許諾を得た場合、バックインレイに指定のシールを貼る事が義務づけられます。(このシールは申請と同時にJASRACから配給されます)
海外でプレスを行う場合はこのシールを貼る事が必須となりますが、国内でプレスを行う場合、工場によってはシールの貼り付けが免除されている工場がありますので、印刷での表示が可能となります。

プレス
マスタリングを終えた音声データとジャケットのデータが揃ったところでプレス工場への入稿となります。
納期は通常20日です。
プレスの上がったディスクは工場から直接ご指定の場所へお届けします。
完成したCDを流通に流すことをお考えの場合、発売日の3ヶ月前にプレスを終了されていることをお薦めします。
CDの情報がディストリビューター、雑誌、インターネットに十分行き渡るまでに3ヶ月を必要とします。
たとえよい物が出来てもこの情報が行き渡る前に発売してしまうと、思うような売り上げに繋がらないことが多くあります。

流通とダウンロード販売など

弊社で制作していただいた音源はご相談の上、弊社レーベルのタイトルとして販売をお手伝いさせていただくことも可能ですし、そうならない場合でもレーベル同様の流通、販売のお手伝いを致します。

1 流通
VIVID productionsでは、完成した音源の販売もお手伝いします。
流通に乗せる。
全国のCDショップでの購入が可能になります。
店頭に並べてもらうためには、CDショップからの注文が必要となります。
CDショップに対しては注文票というCDの基本的な情報とPRを記述したシートが発売日前に配布されます。CDショップはこの注文票の情報を元に発注を決定するので、魅力的な注文票の作成も大切なポイントです。
流通でCDを販売した場合、売上金額の50%が流通に関わる業者に支払われます。
別途流通登録費用が必要です。

2 ダウンロード販売
弊社では高音質ダウンロード販売のe-onkyo music(http://music.e-onkyo.com/)様と業務提携をしています。
弊社レーベルでの発売が決定した場合、e-onkyo musicからの配信が可能となります。
手数料は売り上げの50%ととなります。
また、手数料は割高になってしまいますが、i-tune Storeからの配信も可能です。
手数料は売り上げの70%となります。

3 弊社サイトでの販売
弊社レーベルでの発売が決定した場合、弊社サイトでの販売が可能となります。
手数料は売り上げの25%となります。

費用その他
これまでご説明したホール使用料、調律、録音、編集、マスタリング、写真撮影、ジャケットデザイン、プレス、流通登録を行った場合、贅沢に制作したとして100枚あたりの経費が160万円前後になります。
録音の日程を2日、ホールを郊外の安価な場所、などに調整することによって経費はかなり削減できます。
一枚2500円を手売りで販売したとして、1000枚完売したときの収入は250万円になります。
クラシックの演奏家の場合、ほとんどの場合がコンサート会場での手売りになるケースが多いようです。
活発に活動されている方の場合ですと、早ければ1年くらいでこの枚数を売り切ってしまわれる方もいらっしゃいます。

演奏家としての自分をよりよくPRすると言うことはとても大切な仕事だと思います。
クラシックのCDの場合、かかる費用は地道な活動の中で改修できる範囲の物だと思います。
初回の費用が用意できれば、定期的な制作が可能だと思います。

最後に
常々CD制作のご依頼を頂いたときにお客様にご説明する内容をまとめてみました。
ご不明な点はお問い合わせ下さい。

音楽を愛している限り、全ての演奏家の中にある音楽は同じ
が私たちの信念です。

皆様の中にある音楽を掘り起こす作業をお手伝いできれば、この上ない幸せです。

2011/05/01
VIVID productions Co.,Ltd

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