最近のクラシックの音源制作では、“編集という作業が必ずと言っていいほど前提”となっています。
今回は、その編集について少し考えてみたいと思います。
これまでの経験から感じることは、編集を前提とした意識を持って行う演奏や作業は、
あまり良い結果を出せません。
演奏が細切れになればなるほど、仕上がったものに対して
「演奏は間違いないんだけど、流れとか勢いがね・・・・」
という感想を頂くことが多い様です。
原因はやはり・・・、
編集を前提に演奏することによって、
演奏に集中しきれない状態が生まれたり、1曲通しての大きなビジョンを描くことが難しくなったりする、
からだと思います。
これまで高い評価をいただいた作品について思い返してみると、1曲通して演奏した音源をベースに編集したものが圧倒的に多いことに気がつきます。
1曲通した演奏を2つか3つ録音して、どうしても上手くいかなかった箇所を部分的に録って後はたっぷりと休憩するという方法が良い様です。
そうすると、編集の段階で「弾けたか弾けなかったか・・・」よりも、もう少し踏み込んで「曲に対する解釈や表現」がどうだったか?という観点から編集を行うことになるので、より深みのある音楽を表現することが可能になります。
もちろん、その様なアプローチをするためには音楽に対する理解やアプローチが深ければ深いほど良いということになりますから、レコーディング前のリハーサルや練習はとても大切になると思います。
そういう意味ではコンサートやリサイタルが終わって、その音楽が体の中に染み込んでいる間にレコーディングを行うのは一つの理想的な方法かもしれません。
もちろん、編集を前提とした音楽表現もありますので、要は・・・、
『それをどう使って何をどう作るか?』
というビジョンをしっかりと持っておくこと、が大切なのだと思います。
弊社で制作させていただいた「渡辺秋香」さんの作品は、秋香さんのリサイタルが終了して2週間後くらいにレコーディングを行っています。
この作品は収録も非常にスムーズでしたし、内容も非常に充実したものになっています。
OEuvres pour piano de Francis Poulenc Vol.1 -フランシス・プーランクピアノ作品集-
また、高橋和歌さんのアルバム、
Solo・Waka 高橋和歌 ヴァイオリン作品集vol.1
は、和歌さんが長年弾き込んで来られたレパートリーを2日で録音したものです。
この音源も、各方面から高い評価をいただきました。