Re-Try

Alexisのマスタリングの音作りがイマイチ気に入っていなかったので、時間を置いて再度トライしてみた。
通常なら1日何十万というお金を掛けてマスタリングスタジオを使用しなければならないのだが、コンピューターの進歩のお陰で、自宅で簡単に色々な事がチェックできるようになった。
有り難い事だ・・・

収録した音には本当に少しづつ、4つの操作をしている。
1)ノイズの除去。
ホールの空調の音や、機会が持っている”サーッ”という自己ノイズなど、音楽に本来必要ない音を除去。
2)音質の調整。
マイクにはそれぞれ特性があり、ホールで鳴っている音をそのまま拾っている訳ではない。
そのためにマイクの特性を補正して現実の物と近いイメージを作り上げる。
3)広がり感の調整。
ステレオで聞いた時の広がった感じはマイクの幅でコントロールするのが基本。
しかし、現場では調整する時間がないため、収録した信号を一度特殊な信号に分解して再度ステレオの音を構築する。その際、分解した信号の混ぜ方を変えて広がり感を再調整する。
4)響きの再調整。
楽器の音とホールの響きのバランスは、マイクの位置で調整する。
しかし、これも現場で微調整する時間がない場合が多いため、持ち帰って微調整する。

録音時のホールでの作業は、良い演奏をして貰うために技術的な事をある程度犠牲にする事がある。
良い演奏が始まりそうな時、僕がマイクを調整したいと思ってミュージシャンのモチベーションを削いでしまってはいけないからだ。
CDを買う人は良い音を聞きたいのではなく、素敵な音楽を聴きたいのだ。
少なくとも僕はそうだ・・・・・・
良い音は、それをリスナーに届けるための入り口でしかない様な気がする。

最近、打ち合わせでパリの御自宅に電話を掛けるといつも収録した音源が鳴っている。
それほど彼らにとっては大切な物を預かっているのだと改めて思い知らされる。
CDを作ると言うことは僕らにとっては日常だが、彼らにとっては一生の中の大切な事件なのだ。
このことを忘れては行けないと改めて思う。

結局、1/1000秒の世界の操作を少し加えただけで見違える音になり、今のところのベストテイクが出来上がった。
VIVIDな音になった様な気がする。

By VIVID productions Co.,Ltd

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