録音という仕事について

ブログデビューする事にした。
一回目は何を書こうかと迷ったが、”録音”というものについて書いてみたいと思う。

良くお客様から聞かれる質問に、
”CD作る時って間違えちゃいけないんでしょ??”
というのがある。

演奏が聴いていられないほどのミスは問題アリかも知れないが、僕はそれよりも大切な物があると思っている。

どんなジャンルでも良いけど、同業者(同じ楽器の人が)”音楽”ではなく”演奏”を聞くためにCDを買う確率は1割にも満たないと思うし、そのような音楽の聴き方は”音楽の評価”に値しない。

ほとんどの人は、音楽に励まされたり、癒されたり、慰められたりしたくてCDを買う。
その人達に寄り添ってあげられる”何か”が入ってさえいれば、そのソフトは良いソフトだというのが僕の意見だ。
つまりそれは、正確無比な演奏ではなく、間違っていても演奏者がその人の手で紡ぎ出した”音楽”であり、その事に真摯に取り組んだ”こころ”であり、そこから聞こえる”うた”だと思う。

だから、僕が担当する現場では雰囲気作りに気を遣う。
演奏者が”音”だけと対峙出来て、心の奥底の静かな海から音楽の滴を拾い揚げて来るのをじっと見守る。
その時の演奏上のミスは、音楽という大きな流れからすれば、本当に些細な事だと思う。
だから、演奏者の方には雑念無く音楽の世界に没頭出来る状態にして来て下さいとお願いする。

あなたが音楽の海から拾い上げた物が、他の人の心を震わせる。
それは、人の営みが人の営みに繋がる事であり、その繋がるという部分に僕らの仕事が介在している様な気がする。

ちょっと理屈っぽすぎるか・・・・・

20050714PHOTO:LIM DONG-MIN(イム・ドンミン)リサイタルの収録風景(2005/05/13 浜離宮朝日ホール)使用マイクSCHOEPS CMC-621

 

 

 

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