いつもお世話になっているi-courseの池田さんに事務所に来ていただいて、NEUMANN M-150というマイクの真空管とオペアンプ、配線材の交換を行いました。
20年くらい前まではマイクロホンの主なマーケットはレコーディング・スタジオや放送局が100%と言っていいほどだったのですが、近年の録音環境の変化に伴って自宅で録音を行っているミュージシャンが主なターゲットになってきました。
そこで起こることは低価格化です。
マイクロホンの値段は一昔前の5分の1から10分の1まで下がって来て、プロ用とコンシュマー用の境目がなくなってきたのですが、その中で犠牲になっているのが実は音色や耐久性というプロに厳しく求められる部分なのです。
高い製品というものは高いなりの理由があって、選び抜かれた部品を考え抜かれた設計で組み立てるからこそプロの厳しい要求に応えることができるのですが、最近の製品はそのあたりでコストを削減しているため音質が今ひとつ良くありません。
NEUMANNという会社は歴史のある会社でレコード産業の創世記からスタジオ仕様のマイクで高い評価を受けてきました。
同社が発表する新しいマイクたちもそれらのマイクに使われていたノウハウや部品を継承はしているものの、今ひとつ納得する音にはなりません。ただ、ここ数年の検証の結果、それらのマイクでも真空管、オペアンプ、コンデンサー、配線材などのパーツをスペックの高いものに交換すると色々な問題が解決することがわかってきました。
ただ、どんなパーツを仕様しているかということは企業秘密に関わることでもあるのでマイクの中の部品の型番の印字は全て削り取ってあることも良くあります。
M-150も御多分に洩れずで主要な部品の印字は削り取ってありました。
NEUMANNに連絡すると「私たちはそのマイクの性能に自信を持っている。だからパーツの型番をあなたに教える必要はない」との回答。
それでも、僕たちは長い間NEUMANNのマイクを使ってきて今のマイクの性能には納得していない。でも、色々な状況もわかるしメーカーとしての立場もわかる。でも、そのマイクが持っているポテンシャルはそんなレベルの低いものでもないし個々のパーツを替えれば可能性はもっと広がるんじゃないか・・・・
みたいなやり取りが1ヶ月くらい続いたあと
「交換は自己責任で」
という条件付きでパーツの番号を教えてもらいました。
交換作業の結果は思いの外良くて、マイクを通して見える景色が遠くまで、広く、鮮やかになった感じです。
ハイレゾという新しいメディアはこれまでの4倍から16倍という情報量を持っています。
それはこれまで聞こえていなかったものが聞こえてくるということで、その点において音楽を送り出す側の用意も周到に行われなくてはなりません。
この記事へのコメントはありません。