「よい音」について考える 〜録音現場での考察〜

「よい音」って千差万別だと思います。
先ずは音楽がこの世に降りてきた時点で音楽自身が求めるサウンドがあって、
それを奏でるミュージシャンが求めるサウンドがあって、
それを受け取るリスナーが求めるサウンドがあります。

録音の現場で求められる「よい音」は
ミュージシャンに余計なストレスを与えないサウンド
ミュージシャンに高揚感を与えるサウンド
だと思っています。

ミュージシャンの頭の中で鳴っているサウンドと違うサウンドがスタジオのスピーカーから出ている状況では
ミュージシャンは演奏に集中することができません。
逆に気に入ったサウンドがスピーカーから出ていれば、細かなことに気をとらわれないで”音楽の世界”に没頭できます。
その状況の中でエンジニアの拘りをミュージシャンに押し付けることは決してあってはならないことなのです。

音楽というイメージを伝えるためには
透明感のあるサウンド  が必要な時もあるし、
ダイナミックなサウンド  が必要な時守るし、
歪んだ汚れたサウンド  が必要な時もあるし、
ハイレゾで録ったほうがよい時もあるし、カセットテープで録ったほうがよい時もあります。

その考えの元をたどれば、音楽そのものがそのサウンドを求めていると言うことに気づくのではないでしょうか?

レコーディング・エンジニアに最も求められるのは、その「音楽が求めているサウンド」を想像する能力だと思います。
録音現場でミュージシャンに聞かせる最初のPlay backはその場にいる全員が共有している音楽に対するイメージをより明確にするための叩き台だと思っています。
だから1回目のPlay backは方向性がずれていても構わない。
でも、2回目のPlay backまでにミュージシャンとエンジニアの中にあるイメージの差を無くして、その結果をスピーカーから鳴らせることが大事なのではないかと思います。

もちろん、これは僕自身の考え方で
この話をNew YorkのエンジニアのJim Andersonにした時は
「誰もそんなこと考えていないよ!」
と一蹴されてしまった事もあります(笑)

ま、Jimは忠実に鳴っている音を録りたい人だから志向が違うんだろうな(笑)

時にはこんなにポンコツなプレーヤーで聴く音楽のほうが泣ける時もありわけですし(笑)

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