レコーディングの時に・・・

レコーディングは非日常的な作業です。
誰もいないホールやスタジオにマイクロホンだけが立っていて
その中で、しかも限られた時間の中で自分の演奏と真正面から向き合う・・・
本当に神経のすり減る作業です。

その中で良い結果を得るために大切なものは何なのでしょうか?
今日はその辺りのことについて考えてみたいと思います。

一番大切なことは
「リラックスして音楽に集中する」
だと思います。
私たちはその環境を作ることが大切な仕事だと考えています。

「間違える」ということは録音を行う演奏家にとって大きな「壁」になりがちですが、CDを買ってくれるお客様は間違い探しをするためにCDを買うわけではありません。
お客様が聞きたいのは演奏家の奏でる「音楽」で、それを共有したいのです。

幸いにして今は技術も発展しているので小さなミスは修正ができます。
ですから、とりあえずミスを気にしないで「音楽の世界」に「没頭」して「音楽」というイメージの大きな一筆書きを作ることが一番大切です。
その後に細かな修正の材料を集めれば、イメージに近い作品を作ることができます。

レコーディングは確かに大変な作業ですが、逆に捉えると誰もいない貸切のホールのたっぷりとした響きの中で自由に演奏ができる・・・
そんな、とっても楽しい時間でもあるのです。
その中で奏でた「楽しい音楽」をコンサートに来られない人たちと共有する。
それが作品づくりの大きな目的で、それに向かって作業を行うことが理想です。

目指す「音楽」を明確に。
録音の当日までに大切な準備は間違えずに演奏するということではなく、どういう「音楽」や「表現」をめざすか?ということを明確にしてそれについてアプローチするということだと思います。
確かにレコーディングでは録り直しは何度もできますが、目標とするイメージに向かっての録り直しと、単なる間違いのための録り直しでは消耗する体力も精神力も時間も大きく変わります。そして、それは作品全体にも大きな影響を及ぼします。

小手先の技術を駆使したところで見栄えの良いものを作ることはできますが、リスナーに永く愛されるものを作ることはできません。

録音という作業は、「音」だけではなく、音の向こうにある「イメージ」や「音楽」やはたまた演奏家の「気」の様なものまで記録することができると考えています。

私たちは「音楽するモード」と「間違えずに弾くモード」と呼んでいますが(笑)、
録音の現場においては常に「音楽するモード」にあるのが理想です。

「音楽するモード」のための環境作り。
・音楽、演奏者、楽器にあったホールの選択
・ピアノを使う場合は調律師をどう選ぶか?
・会場の明かりをリラックスできる明かりにする
・休憩のタイミングをどうするか?
・リフレッシュできる飲み物、食べ物はあるか?
・演奏が終わった後の会話に気をつける

などなど・・・
演奏者が音楽に没頭するために気をつけなくてはならない要素は山のようにあります。
その一つがきっかけで音楽がガラリと変わったりもします。

さらに、録音の現場で初めて会う人たちに囲まれて演奏するということは
それだけでもストレスが増え、演奏の妨げになってしまいます。
録音のスタッフとは事前に顔合わせをしたり、情報交換を行うなどして、自分たちの仲間として当日に臨むことも大切な要素の一つだと思います。

そして録音される「音」・・・

私たちの一番大切な仕事は音楽家のパフォーマンスが十分発揮できる様にリラックスして録音できる環境を整えるための「音」へのこだわりは、演奏家の発する「音」の情報を的確に、余すことなく捉えることだと考えています。
現場では録音した音を演奏家と一緒にチェックしますが、その時に演奏者に不安を抱かせてしまうと演奏者はそのことが気になって「音楽するモード」から引き摺り下ろしてしまうことになります。
また、度重なる音のチェックは体力も精神力も消耗してしまいます。

「録音されている音は大丈夫だから、あとは演奏に集中しよう」
と思えるサウンドをいち早く演奏者に提供できること
それが私たちの考える「良い音」なのです。

話は戻りますが、
理想的な録音の一つの例として演奏会の後にレコーディングを行う方法があります。
演奏会に向けて練りこんだ演奏と集中力を少し持続して録音に臨む。
そうするととても良い結果が得られることが多い様です。


#録音 #ピアノ

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