ライブ・レコーディング 〜作り出される世界と失われる物〜

ある女優さんのライブビデオ用の音声の制作が佳境に入っています。

近年はProToolsをはじめとした音声編集のツールが充実してきたことも手伝って、細かなミスの修正やノイズの除去など細部にわたって様々なケアができるようになりました。

歌のピッチや楽器のリズムの修正、歌詞の間違い・・・
本当に色々なことができますが、そういった作業で音楽家が目指した世界観をより高度なレベルで表現することが可能になった一方で難題もいくつか出てきています。

何よりも会場の響きをピックアップしているマイクの音が使いづらくなってしまうことが悩ましい問題です。
ステージで鳴っている音を修正してしまうと会場で響いていた音との整合性がとれなくなってしまうため、修正を行った楽曲については会場で鳴っていた響きが使えなくなってしまいます。

「そんなものは人工的に足してしまえば良いではないか・・・」

という意見もありますが、
ライブ・プログラムの重要な側面である ”伝える” というポイントから考えるとコンサートの雰囲気を伝える重要な要素を失ってしまうことになります。

人工的に付け加えた響きはどうしても現場の熱気と裏腹に冷めざめと聞こえてしまいます。
残念ながらそれが機会やソフトウエアの限界だと思います。
そういった音を整理された音として好むエンジニアもいますが、僕自身はどうしても好きになれません。
多少汚れていても、その汚れがリアリティを伝えるような気がずっとしています。

ということで今回の制作は、そんな状況の中でいかに現場の響きを生かすか?
ということにチャレンジしています。

ビデオが発売になったら改めてお知らせします。

このビデオは僕が就職した翌年、25歳の時の仕事です。
今の自分にはない勢いがあって面白いです。
トラックダウンが上手くいかなくて2日徹夜して、最後はコンソールの前で気を失った思い出があります(笑)

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